【英国ヴィンテージのある暮らし】なぜアーコールNo.391の背棒は貫まで伸びている?秘密とハイタイプ比較

【英国ヴィンテージのある暮らし】なぜアーコールNo.391の背棒は貫まで伸びている?秘密とハイタイプ比較

20世紀半ばのイギリス家具黄金期を創り上げた名門「ERCOL(アーコール社)」。

数あるヴィンテージチェアの中でも、すっきりとしたスマートな立ち姿と軽やかな使い勝手で、今なお世界中で愛され続けている名作が「No.391 スティックバックチェア」です。

「スティックバックチェアってどんな特徴があるの?」「背の高いハイタイプもあるの?」といった疑問をお持ちの方に向けて、No.391の魅力、構造の特徴、ハイタイプとの違い、失敗しない選び方まで詳しく解説します。

1. アーコール No.391 スティックバックチェアとは?歴史とカタログ表記

— Photo: ercol Official Archive —


アーコールの「No.391」は、1950年代から1970年代にかけて製造されていたロングセラーモデルです。正式名称は「All-purpose Windsor Chair(オールパーパス ウィンザーチェア)」と名付けられていました。

当時の公式カタログには、次のように紹介されています。

No. 391 All-purpose Windsor Chair
(Registered design No. 884923)

Finished: Natural or Medium / Dark Colour

A simple well-proportioned and graceful chair for use with the breakfast room tables illustrated, or as a simple desk or bedroom chair. This chair with its seat of solid elm is very comfortable and quite inexpensive.

カタログから読み解く「多目的(All-purpose)」な用途

カタログの記述にある通り、No.391は朝食をとるブレックファストルームのテーブルに合わせる椅子としてはもちろん、「シンプルな書斎のデスクチェア」や「寝室のパーソナルチェア」など、家中のあらゆるシーンで活躍する「万能チェア」として設計されました。

デザイン登録番号(Registered design No. 884923)が取得されていたことからも、アーコール社がその独自性とデザインの美しさに強いこだわりを持っていたことが分かります。

※「Registered design No. 884923」とは、1957年に英国特許庁へ登録された意匠登録番号(デザインの特許番号)のこと。他社による模倣を防ぐための独占権利であり、アーコール社がこの革新的なデザインと構造に深いこだわりと誇りを持っていた証でもあります。

2. No.391 スティックバックチェアの3つの構造的特徴

①なぜ背棒(スポーク)は座面を通って「貫(ぬき)」まで届いているのか?

一般的なチェアは背もたれの棒(スポーク)が座面の上で留まっていますが、No.391は背棒が座面を上下に通って(貫き)、足元の横棒(貫:ぬき)まで一本のパーツとして一直線につながっているという独特な構造をしています。座面から木棒が飛び出している(突き抜けている)わけではありませんが、この「座面を通って足元まで伸びる」設計には、耐久性と座り心地を極限まで高める明確な理由があります。

◎荷重を分散し、華奢でも折れにくい構造にするため

背棒を座面だけで留めると、寄りかかった際に接合部へ強い負担がかかり、長年の使用でグラつきや破損の原因になります。座面と足元の「貫(ぬき)」の2箇所で二重に固定することで、華奢で細身な見た目からは想像できない圧倒的な堅牢性を実現しています。

◎背中をしなやかに受け止める「心地よい座り心地」

貫まで長く伸びた背棒構造により、寄りかかった際に適度な「しなり」が生まれます。木製でありながら背中に優しくフィットし、長時間の着座でも疲れにくい快適さを生み出しています。

◎縦のラインを強調するスマートな美しさ

背もたれから脚元までスッと一直線に伸びる木質のラインは、視覚的に縦のラインを際立たせ、お部屋全体をスマートで洗練された印象に見せてくれます。構造上の補強パーツをデザインの魅力へ昇華させた、アーコールならではの職人技です。

② 無垢エルム材とビーチ材のコンビネーション

座面にはダイナミックな木目が美しい無垢のエルム材(ニレ)を使用。お尻の形に合わせて滑らかに削り出された「座繰り(ざぐり)加工」が施されており、木製でありながら身体にやさしくフィットします。 フレームや背棒には、しなやかで強度のあるビーチ材(ブナ)が使われており、異素材が織りなす経年変化のグラデーションも魅力です。

「No.391(ロータイプ)」と「ハイスティックバックチェア」の違い

■ No.391(スタンダード・ロータイプ)

  • 高さ(全高): 約79〜82cm(コンパクト)

  • お部屋の印象: 背もたれが低いため圧迫感がなく、お部屋やダイニング空間を広く見せる効果があります。

  • 座り心地: 出入りがしやすく、立ち座りがスムーズ。普段使いのダイニングチェアとして最適です。

  • おすすめの用途: 限られたダイニングスペース、キッチン、ちょっとした作業用のサブチェア。

■ ハイスティックバックチェア

  • 高さ(全高):約92〜93cm(ハイバック)

  • お部屋の印象: 伸びやかな垂直ラインが美しく、インテリアの主役として空間のアクセントになります。

  • 座り心地: 背中を高い位置までしっかり支えてくれるため、姿勢を保ちやすく長時間の着座にも向いています。

  • おすすめの用途: ゆったり過ごしたい書斎のデスクチェア、スペースにゆとりのあるダイニング。

■【構造の共通点】

どちらのモデルも、背棒が座面を貫通して足元の「貫(ぬき)」まで一直線に差し込まれる堅牢な構造や、無垢のエルム材座面とビーチ材フレームの組み合わせは共通しています。

4. インテリアに取り入れる際のおすすめコーディネート・使い方

— Photo: ercol Official Archive —

No.391の持つシンプル&スタイリッシュな佇まいは、北欧インテリアやナチュラルモダン、和モダンなど、さまざまなテイストに馴染みます。

  • ダイニングテーブルのセットとして
    すっきりとした背もたれは、テーブル周りを広く見せてくれます。すべてNo.391で揃えるのはもちろん、あえて別のアーコールチェア(ゴールドスミスやクエーカーなど)とバラバラに組み合わせる「ミックススタイル」も人気です。

  • 書斎やワークスペースのデスクチェアに
    直線的なデザインは作業机とも相性抜群。圧迫感がないため、リビングの一角に作ったワークスペースにも自然に溶け込みます。

  • ベッドルームや玄関のディスプレイチェアに
    使わない時間も絵になる立ち姿のため、脱いだ服をサッとかけたり、お気に入りのバッグや観葉植物を飾るインテリアとしても活躍します。

5.日常使いに最適なアーコールの隠れた名作

アーコールの「No.391 スティックバックチェア」は、当時のカタログが示す通り「シンプルでプロポーションが良く、多目的に使えて手頃」という、日常の暮らしに寄り添う名品です。

コンパクトで扱いやすい「No.391」と、存在感のある「ハイスティックバックチェア」。

ご自身のライフスタイルやお部屋の広さに合わせて、ぜひお気に入りの一脚を選んでみてください。

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